風ノ行方
□act.1
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フッと笑った老人が指を指したその先に…
「ぁ…ハリー、ポッター……」
そこにはあたしが探していたハリーポッターの本が棚に並んでいた。
なぜ?
なぜこの老人はあたしが探している本を知っていたのか……
その疑問があったが、今はそれよりも、無いと思っていた探していた本が見つかった興奮で、アズカバンの囚人の巻に手を伸ばした。
『見つけた……少女よ…』
「!!!」
本から漏れた光が、否、手があたしの手首を掴んだ。
「ひぃ…!!」
慌てて店主の老人に視線で助けを求めたが、そこにはもう店主の姿はなかった。
『すまん…』
その言葉と共に、目の前が光に包まれた。
消えた少女を追うかのように、古本屋も姿を消した。
そう。
元々そこには古本屋など存在していなかったのだ。
少女は誰にも気付かれる事がなくこの世界からいなくなった。
少女がいなくなった事に気付かないままに、世界は動いていく………
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