キリリク部屋
□To meet you in the dream
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「あと3個か…」
そうつぶやきながら、時計屋、ユリウス・モンレーは黙々と仕事をしていた。
「さっさと終わらせてしまおう…。終わらせなければ…。」
ユリウスが珍しくこんなにもぶつぶついいながら仕事をこなしているのには、理由があった。ユリウスにとっては、とても大切な理由が。
「…ナイトメア…」
ユリウスが再び、ぽつりとつぶやいた。
そう、ユリウスがここまで早く仕事を片付けようとする理由、それは、夢魔、ナイトメアと会うためであった。
ナイトメアは夢魔であるがために、今は夢の中でしか会うことが叶わないのだ。
しかも、ナイトメア自身も夢の中を移動しているので、そう毎回会えるとも限らない。
それでも、ユリウスはナイトメアにいち早く会うためにも、こうして仕事を急いで片付けようとしているのだ。
だが、早まる気持ちを抑えきれないがゆえに、
ぱきんっ
「…ぁ。」
ユリウスは小さく、しまった、といったような声を上げた。
普段なら仕事で失敗など滅多にしないユリウスらしからぬミスも多くなる。
「はあ…。いつになったら終わるのか。私としたことが、こんなに冷静さを欠かされるなんぞ…。」
いつの間にか、ユリウスのつぶやきは自己嫌悪へと変わっていた。
ユリウスの性分である以上、仕方ないと言ってしまったらそれまでなのだが。
それでも、こんな風にぼやかなければ、本当にどうにかなってしまいそうだから。
だから、自己嫌悪に陥ってまで、なんとか自分を保とうとする。
そんな自己嫌悪をぶつぶつと吐きながら作業すること約2時間。
「…終わった…」
仕事が終わると、ユリウスは着替えもせずに、すぐさまベッドに転がり込んだ。
相当疲れていたのだろう、すぐに眠りこんでしまった。