海外ドラマ

□日常
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「今日からお前たちの妹になる、名無しさんだ。ディーン、サム、二人で守るんだぞ」

寒い冬の日、狩りから戻って来た親父が小さな少女を連れてきた。怯えた様に親父の後ろに隠れた少女。

「俺はディーン、こっちは弟のサムだ。よろしくな」

「よろしくね」

突然の事で顔を見合わせた俺とサムだったが、あまりに親父から離れない有希子に笑顔を向けた。

「…よ、よろしく…」

蚊が鳴くような小さな声で、少しはにかむ 名無しさん に心奪われたのはそれが初めてだった。



「…ィーン…ディ…ーン」

愛しい声が聞こえて意識が浮上する。薄く目を開けると 名無しさん が俺を必死に起こすいつもの光景。

「やっと起きた!もう朝だよ」

「………」

「ディーン?まだ寝惚けてる?」

目の前で手を振りながら首を傾げる 名無しさん の腰を素早く引き寄せ、首筋に顔を埋める。

「デ、ディーン!?」

鼻孔を掠める甘い薫り…俺を麻痺させるには充分だった。

「…おはよう 名無しさん 」

低い声で呟けば、照れながらおはようと小さく返してくれた。それに気をよくした俺は更に抱く力を強める。

「きゃっ!」

バシャッ!

「冷てぇ!!」

突如 名無しさん が腕の中から消えたと思うと頭から冷水が降りかかってきた。

「これで目が覚めただろ?」

にっこりと黒い笑顔で立っているサムを思いっきり睨み付ける。ちゃっかり 名無しさん を抱き締めているのも気に入らない。

「何すんだサム!」

「 名無しさん が困ってるみたいだし、早く起きてくれ…ごめんね、 名無しさん 。痛くなかった?」

「う、うん。びっくりしただけだから」

「兄貴には近付かない方がいいよ。いろいろ移るから」

「いろいろって何だよ!移るって俺は病原菌か!」

「それより早く着替えてくれば?ディーンが風邪引いても誰も面倒みないよ。 名無しさん 、朝ご飯買って来たから食べよう」

俺に向ける笑顔と 名無しさん に向ける笑顔が違いすぎる!
サムに引きずられながら、 名無しさん は部屋を出ていった。
…早く着替えよう…

「はい、 名無しさん には生クリームのワッフルとカフェラテだよ」

「わー!ありがとうサム!」

輝く笑顔で食べ始める 名無しさん に、思わず口が緩む。年齢にしては幼さが残る 名無しさん はすごい可愛い。親父に連れられてうちに来た時は、毎日緊張してて俺やディーンにも全く笑顔を見せなかった。月日がたつにつれ家族には心を開いた 名無しさん 。世間知らずな面もあり(むしろ、皆が過保護すぎる)俺とディーン、親父も 名無しさん を大事に育てた。そのせいか、俺もディーンも 名無しさん を妹としてではなく、一人の女性として見ている。
まぁ、あんなにディーンの露骨な態度にも全く気付いてないから困り者だけどね。

「これ美味しい…サムも一口食べる?」

差し出されたフォークに笑顔の 名無しさん 。
…このまま 名無しさん ごと食べたい…

「ありがとう」

そんな事は露にも出さずに食べさせてもらったワッフルは見た目以上に甘くて俺を惑わせる。

「… 名無しさん 、口にクリーム付いてる」

「え?どこ…」

名無しさん が口を拭く前に、口端に付いてるクリームを舌で嘗め取った。

「サ、サム!」

「甘いね。 名無しさん が甘いからかな?」

顔を真っ赤にした 名無しさん が愛しくて堪らない。兄貴にだって絶対に渡すものか。

「なーにしちゃってるのかな?サミーちゃんは…」

着替え終わったディーンが米神をひきつらせながらやってきた。
名無しさん の隣に座ると買って来ていたサンドに貪りつく。

「 名無しさん 、気を付けろよ。サミーはムッツリだから何考えてるか分からないぞ」

「ディーンこそ露骨な態度だから 名無しさん はもっと気を付けた方がいいよ」

「あ、あはは…」

相変わらずな兄達に笑いが込み上げる。
そんな日常が私の幸せ。

 

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