世界を繋ぐ扉

□君がため
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 ぱたん、と小説を閉じて、きっと由磨を睨むあたし。
 何か知らないけど、由磨は良くあたしにちょっかい出す。
 もう智砂ちゃんという子が居るくせに。
 しかもらぶらぶなんだよねー。
 それが不思議だ……。
「華威兄ぃはお兄ちゃん。幼馴染みなだけだもん」
 決まって、あたしはこう返す。
“華威兄ぃ”って呼び方も、昔からのもの。
 この呼び方は華威兄ぃ自身「そうして」って言ってきたし、あたしも好きだし。
 でも、この呼び方、すんごく馴れ馴れしいっぽくて、良く色んな女の人に睨まれる。
 呼び出されそうになった事もあるしなぁ。
 人前で使うの、止めようかな。
 それでも、使っちゃうのは、あたしの為なのか、それとも。
「やっぱり好きだろ?」
 そう言って笑い掛ける由磨。
 う、と詰まるあたしに、智砂ちゃんが苦笑い。
 き、と思い切り睨んでやったけど、何か、満更でも無い、かも……。


「寒い」
 はぁ、と手に息を掛ける。
 放課後の外掃除は身に染みるなぁ。
 特に今の、12月の時期は。
 それに、何と無く気持ち悪い。
 最近食欲も無いし、風でも引いたかな。
 毎日薄着で夜風に当たっているからかな……華威兄ぃの所為だ、このやろう。
 少し動きを止めていたあたしに、友達からそろそろ終わるよ、と声が掛かる。
 あたしは我に返り、返事をして、戻っていく皆に混ざる。
 昇降口まで来たとき、入り口に数人溜まってるのが見えた。
 見事に女の人ばっかりだったけど、その中に、華威兄ぃの姿が確認出来た。
 どき、として、友達の陰に隠れるあたし。
 幸い、華威兄ぃには気付かれていないようだ。
 その友達はと言うと、華威兄ぃを近くで見れた事が嬉しいのか、きゃあきゃあと騒ぐ。
 ……連れてる女の人、皆綺麗だな。
 あたしとは全然違ってて。
 そんな中に居ても、普通に笑ってる華威兄ぃ。
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