世界を繋ぐ扉

□移りゆくモノ
1ページ/12ページ

雨が降っていた。
 
ザァザァ。と地面を抉るような強さで。
 
歴史の文明機によると今週はずっと雨のようだ。
 
私は酷く落胆した。
 
「こんな天気じゃやれるもんもやれないか」
 
そばに置いてあった四角い小さな箱に手を伸ばす。
 
『Marlboro』と箱には書いてあった。
 
「…もう無いか」
 
箱の中にあるはずのモノも無くなっていた。
 
依然として窓を雨が叩きつけている。
 
「あの、この箱はどうすれば…?」
 
「ん?あぁ、それは置いておけ……」
 
まったく、あまり物を動かされると面倒になる。
 
そういえば……
 
「あれからもう十年か」
 
「どうかしたんですか?」
 
「いや、何でもないコッチの話だ」
 
確か、引き出しの中に…あった。
 
古ぼけた、半分の写真。
 
ピースをしている少女。
 
少女の肩には手が置かれているが、その主が写っていない……
 
破りとられた所がそうなのだろうか。
 
「思い出したくない記憶、か」
 
私の机の上に置いてあるコーヒーはもう完全に冷めきっていた。
 
「わるいが、コーヒーを替えてくれるか?」
 
「……解りました」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ