世界を繋ぐ扉

□君がため
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「華威兄ぃ、今何時だと思ってんの?」
 パジャマの上にカーディガンを一枚だけ羽織って、サンダルで玄関に出た。
 外には、まだ制服姿の華威兄ぃ。
「悪ぃ、カラオケ帰りで」
 そう告げた後、やっぱりお前の顔見ないと眠れないから、と続ける。
 はいはい、とあたしは素っ気無く返す。
 毎回言われるこちらにしてみれば、もう相手にもしたくない。
「じゃな琉菜、おやすみー」
 そう言って、2軒先の自分の家に帰っていく華威兄ぃ。
 あたしは軽く手を振って、そんな彼を見送った。
 ……こんな遅くまで、毎日遊ぶ華威兄ぃ。
 それに付き合うあたしもあたしだけど。
 華威兄ぃ、いつからあんなになっちゃったんだろ。
 昔はもっと自然で、大人しくて、好きだったのに。


 あたしの通う学校は中高一貫。
 あたしは中二、華威兄ぃは高三。
 勿論校舎が違うから、滅多に会う事は無いんだけど……。
「きゃーっ永沼先輩だーっ」
「今日もカッコ良いっ」
 でもまた違う女の人連れてる、とその後に続けられた。
 でもそれが良いとか何とか。
 華威兄ぃ、中学生から妙に人気有るのよね。
 まぁ、高校生からも絶大な支持を得てるけど。
 中庭に居るらしく、どちらの校舎からも見えるので、華威兄ぃはいつも騒がれっぱなし。
 中等部生からの人気凄いよ、って一回華威兄ぃに言ったら、「流石俺」とか言ってたっけ、あの人。
 何かその時、すっごく居心地悪くなったの覚えてる。
 それから、華威兄ぃとは距離を作ったんだっけ?
「琉菜、やきもち?」
 読みかけの小説のページが進んでいない事に気付いたのか、ひょっこりと由磨が来て言った。
 隣には、彼女の智砂ちゃん。
「別にー……」
「嘘吐け」
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