幻便

□屑の輝き
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『屑の輝き』



「ほら、ここまで来たよ」
少年は少女の手を引き、小高い丘へとやってきた。
「見上げてごらん」
少年は優しい声で呟いた。少女はその声で、俯いていた顔をゆっくり上げた。
「……きれい」
透き通る声で少女は囁いた。
風は彼女のスカートをひらひらと揺する。
「屑でも輝けるんだよ」
少年は空の星々を見上げたまま呟いた。
「君がどんなにつらい思いをしても、君がこの世界の喜びの儚さに気付いたとしても、その儚いモノすなわち――」
少年は目をつぶった。
そして、大きく息を吸い、少女の目を見た。
「星屑――。やがてそれは、集まって、きれいに輝ける」
木々はサラサラと鳴る 少女の頬をくすぐる風は、何かを彼女に伝えるかのよう……。
「この日々のこと……、これからのこと……、私の星になるかな……?」
少女は震える声で、少年に尋ねた。
少年はただ、頷いた。
少女の微笑みの瞳の中から、綺麗な光がにじみ出た。それは、彼女のこれからを歩む、希望の光……。
「屑はきっと輝ける……ね……」
ただ少女は空を見上げる。

こんなに広い空が
こんなにも彼方まで広がるから
そんな空が
この世界にはあるから……

少女の瞳の光は、ますます輝きに満ちるだろう。

彼女は歩みだす
信じた道があるから

少女が隣を向くと、いつも見慣れた少年の笑み

帰る場所はいつでもあるよ。

少女は自分の道を歩み続ける――

 




(2008年7月26日制作)
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