幻影曲
□時間が創り出したもの
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「シン君、あーそぼ」
「なんで付いてくるんだよ?」
呆れたように呟いた。
「なんでって……。友達でしょ?」
彼女は笑っていた。他の友達が集まっているところを指差し、ほらと俺を促した。
俺は首を横に振り、別の方に行こうとした。すると後ろから声が聞こえた。
「私、知ってるよ。亮君と毎日ケンカしてるんでしょ? でも、大丈夫だよ。コウ君とかショウ君とかタッツーとかみんないるよ。だから独りにならないでよ」
俺は遮るように怒鳴りつけた。
「僕に関わるな! アスのせいで僕はからかわれるんだ。ほっといてくれ」
そう怒鳴りつけて、走り去った。
後ろから声が聞こえたような気がした。
「そっか。じゃあ、私が関わらなければいいんだ……」
小さい声だったが俺の耳にははっきり聞こえた。あてつけでも責めようとしてるわけでもない。その呟き声は寂しそうだった。それは、今でも俺の胸に突き刺さる。
俺は彼女の顔を見ることができなかった。
それから彼女は俺に話しかけてくることも、他の男友達と遊ぶこともなくなった。