BANDIT

□steal.6
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「そういえば、聞きたいことがあったんだけど」


レンはふと、船頭へと声を掛ける。


「なんでしょう?」

「ウォートアリアには人魚の伝説があるんだって?」


レンの問いに船頭は飴色の瞳を細めて微笑んだ。


「ええ。古くからこの島には人魚が関わる伝説が多く残っています」

「じゃあ、水泡の哀歌もその一つか?」


その言葉に船頭は一度目を丸くする。


「よくご存じですね。水泡の哀歌は人と人魚の悲恋の話です」

「へぇ…なんとなくそんな気はしてたけどやっぱりそうか」

「はい。人との恋に破れた人魚が、哀しみの気持ちを忘れるために歌にして水の泡に封じ込めたのが水泡の哀歌と言われています」

「水の泡って…そんなこと出来るんですか?」


驚いたようなソラの反応に船頭は困ったように眉を下げて笑みを浮かべる。


「どうでしょう…本当かは分かりませんが、人魚は人が使えないような力を使えるとも言われているので出来るのかもしれません」

「人魚ってすごいんですね…でもなんだか切なくて悲しいお話だなぁ」


しゅん、と表情が暗くなるソラを見て船頭は焦ったような表情に変わる。


「すみません、盛り下げるような話をしてしまいましたね。お待たせしました、そろそろウォートアリアに着きますよ」


その言葉に前を見ると木で出来た桟橋とその奥に歴史を感じるレンガ造りの建物が建ち並んでいるのが見えた。


「わぁ!」


それだけで沈んでいたソラの表情も明るくなる。
単純、とそれを見ていたレンは呆れたように呟いた。


「では、どうぞウォートアリアを楽しんでくださいね」

「ありがとうございます!」

「どーも」


桟橋に降りた二人に頭を下げる船頭に礼を述べてから、歩き出す。
歩きながらソラはレンをちらりと見る。


「……レンの狙う宝はいつも厄介そうだなぁ」

「やりがいあるだろ?」

「…そうだね」


そんな会話をしつつ情報を集めるために二人は人がいそうな街の中心部へと向かうことにしたのだった。


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