BANDIT
□steal.5
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その街は通称、植物の街と言われている。名は『プラフィンユ』
しかし、プラフィンユは決して昔から植物の栽培が盛んだったわけではない。
数年前、とある一つの企業が植物に関する研究において飛躍していった。
その研究の成果は植物の成長を速め、丈夫で規格外の大きさへと育てることを可能にした。
それが街の発展の始まりである。
やがて、徐々に勢力を拡大していったその企業は街の市場の大部分を占めるようになる。
その企業の名は
「『グラハッド』?」
ひらひらと花びらが舞う通りで人混みを縫うように進みながらソラはレンの言葉を聞き返した。
「ああ…それがあれ」
「へー…」
レンの視線を追うように顔を上げれば、蔦に覆われた全体がガラス張りの高層の建物が見えた。遠目からでも目立つそれはまるで塔のようだ。
「確かにあちこちで名前を見るね」
「今のこの街はグラハッドで成り立ってるようなものとは聞いてたけど、ここまでとはな…」
「それほどすごいってことかー」
圧倒されるような高さの建物、大通りを行き交う人々の数、見たことのない乗り物。
プラフィンユの街の賑わいや発展具合はソラが見てきたどの街よりも都会的だと思えた。
(…はぐれたら大変そう)
そんなことを思いながらふと、先ほどからふわふわと舞い落ちる薄桃色の花びらを見上げる。
甘い香りをまとい、まるで空の上から降っているようだ。
「…この花びらどこから降ってるんだろうね?」
レンに質問しながら目線を上から横へと移す。
しかし、
「…あれ?」
そこにはレンの姿はなかった。
「…嘘でしょ…」
さっそく迷子である。
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