BANDIT
□steal.7
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それを見つけたのは、次の街へと向かう最中のとある森。
ふわふわと風に揺れる淡い紫色の花がふと目に入った。
複数の花弁が密集し、ころんと丸い形になった可愛らしい小さな花だ。
「レン、あの花何か分かる?」
「どれ?」
すっかり定番になったやり取りにレンも特に表情を変えずに返事をする。
ソラの指差した先を見てああ、と理解してから問いに答えた。
「アイシュオンだな」
「アイシュオン?」
「そう。確かどっかじゃ手向けの花として使われてるんだったか」
「何か意味があるの?」
頷いたレンが指差したのは同じアイシュオンだが、その色は花びらの先だけ紫で茎に近くなるほど白に変わっていて綺麗なグラデーションになっていた。
「あの花、最初は淡い紫だけど、だんだんと色が白に変わっていくんだよ。それが悲しみの涙で色が落ちていったから、とかで」
「なるほど…それで手向けの花に」
なんだか素敵だねぇ、と呑気に笑うソラを横目にレンは微かに目を伏せる。
「でも…あの花がこの辺りで自生してるのは変だけどな」
「そうなの?」
「アイシュオンはもっと寒い土地で咲く花だから」
「それは…確かに不思議かも」
今、レンとソラがいる場所はどちらかというと暖かい地域になるので、咲くのに向いている気候とは言えない。
「気温関係なく咲くのに何か逸話があった気がするけど….忘れた」
「……レンが忘れることあるんだ!?」
「驚くとこ、そこ?」
大袈裟に驚くソラにレンは呆れた目を向けた。
レンが忘れた逸話。
それは、
アイシュオンは死のあるところに咲く花だと言われていること
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