あの日の夏

□ウォーターガンマン
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少しだけ風が出てきた午後のこと。



「……ふぁ……」



いつもの縁側でユースケが呑気に欠伸をした時でした。



ビシャッ!!



「…………は?」



音がしたなと思えば、自分の後頭部は水に濡れていました。



「よっしゃっ!!ユースケ仕留めたりぃ!!」




そして満面な笑みのケンの姿。
手には何か持っています。



「……なんだよそれ」

「水鉄砲ー」

「物置にあったんだって」

「……ふーん」



ユースケは酷く呆れた顔をしました。



「興味無さそうだね」

「興味ねぇからな」

「そんなこと言うなって。ほら、ユースケの分」

「いや…俺、別にいらない」

「ユースケ!!逃げるなよ!!勝負はこれからだぞ!!」



ケンのその言葉にユースケは反応しました。



「ふーん…ダイ、それ貸せ」

「はい」


受け取った瞬間にユースケはケンに向かって水鉄砲を打ちました。



「うひゃあ!?」

「…隙あり」

「やったなー!!…って、冷たっ!!」



ユースケの方を向いていたケンは後ろからの攻撃に声をあげました。



「油断大敵だよ。ケン」


ケンが振り向けば、ケンに水を浴びせた本人―テルはにこりと笑いながら言いました。


「テルー…」

「どんまい、ケン…って、わっ、危なっ」


ダイは別方向から来た水を間一髪で避けました。
避けられたユースケは軽く舌打ちしました。



「…避けんなよ、ダイ」

「いや、避けるよ、普通」

「やっぱ…ケン相手みたいにうまくいかねぇな」

「そういうこと…ほら、仕返し」

「…っ!!…このやろ…」



顔近くに水を浴びたユースケは頭振りながらダイを見ました。

が、ユースケはケンに向かって打ちました。



「うわっ!!え、なんで俺!?」

「腹いせ」

「なんで!?」



抗議してる間もケンへの攻撃は続きます。


「皆、俺に対してなんか恨みが!?」

「えー…あるかも?」

「あるの!?くそー、仕返し!!…あれ、水ない?」



やり返そうにも水が無いことに気付いたケンは蛇口に近寄ります。



「…あ…」


ケンの目にホースが繋がった蛇口が映りました。


「いいこと思いついた!」


ケンはにんまりと笑います。



「あれ?ケンは?」

「ん?そういえば…」

「あ…いた」

「わーはっはっは!さっきまでの俺とは違うぜー!!」



バシャア!!



高らかに笑いながらケンは水を出したままのホースを3人に向けました。



「う、わっ」

「あーあ…」

「つーか…せこくね?」

「そんなことないし!!俺の作戦勝ちだし!!」



呆れる3人に対してケンは胸を張って言いました。



「作戦、勝ちね…」

「なぁ、ケン。知ってるか?」

「?」

「この家、ホースがある蛇口はもう一個あるんだよ」



バシャア!!



テルが言い切ると同時にホースから出た水がケンを襲いました。


「わー!!?冷たい冷たい!!3人がかりは狡い!!」

「…作戦勝ちってことで」




大騒ぎしながらの水鉄砲での打ち合いはやがてホースになり、そして終わりを迎えます。




「あー…疲れた!!」

「皆、びしょ濡れだな」

「…いい年してなにしてんだか」

「でもまぁ…たまにはいいんじゃない?こんな日も」

「……そうだな」




あちこちに出来た水たまりは太陽の光を浴びてきらきらと光っていました。





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