あの日の夏
□ワンピースと夏の音
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チリン…チリン…
風が出てきたある夏の午後。
心地良い風が来る縁側でユースケは寝ころんで涼んでいました。
つい先ほどまでは…
「ちょっと、ゆーすけ!!こんなところににいたら邪魔だよ。どいて」
「………あー……」
百合がやってきてもユースケは生返事をしながら相変わらず寝転び続け百合を見上げます。
「…人が来たら退くつもりだったよ」
「じゃあ、私が来たんだから退くんだよね?」
「…………眠てぇなぁ」
「人の話を聞け」
ユースケは呑気に欠伸をしました。
チリン、チリン…―
風に乗って軽やかな音が聴こえます。
「………ゆーすけってさ、いつもこうなの?」
「…………なにが?」
「なんていうか、こう、掴み所がない感じ?」
ユースケはチラリと百合を見ました。
百合の着ているワンピースが風でふわふわと微かに波打ってます。
「…あんたが掴めてねぇだけじゃねぇ?」
「確かにそうかもしれないけどさ。でも、ゆーすけってあんまり、人と関わろうとしないよね。なんかこう一匹狼って雰囲気がするもん」
ユースケは何も言わず、ただ聞いています。
「だから、自分の本音とかあまり言わないのかなぁって思って。違う?」
ユースケは何かを考えるように目を伏せました。
「………………さぁね…でも、」
「…?」
「………向き合ってくれるんだよな…」
意味が分からず、百合が聞こうとした時…
チリリリーンッ!!!
大分大きな風鈴の音が聴こえた。
そして、
「あっ!!!」
「…お」
百合のワンピースが大きく舞った。
「……水玉……」
「うるさいっ!!見るなーっ!!」
バシバシと百合に脇腹を蹴られ、ユースケは飛び起きました。
「いってっ!!」
「ゆーすけのバカッ!!」
ユースケが起きたことで空いた廊下を百合は怒りながら通っていきました。
「……なんなんだよ、アイツ」
ユースケは小さくため息を吐きました。
チリン…
再び風鈴の優しい音色が聴こえました。
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