あの日の夏

□おひさまの花あげる
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「………あれ?」





目が覚めると皆がいなかった。





「おはようございます」

「あら〜おはよう、ダイちゃん」

「すみません…寝坊しました」




苦笑いしながらダイが応えました。
時計の短針は8、長針は2を指していました。



ケンのおばあさんはニコニコと笑いました。




「気にしなくて良いのよ〜。ちょっと待っててね、おみおつけ温めてくるわ」

「あ、ありがとうございます」




ダイは畳の上に腰を下ろし、ふぅと息を吐きました。




(そういえば…皆は何処に行ったんだろう?)


そう思ったとき…


「あ、ダイだ。おはよー」

「おそよ、ダイ」


ケンとユースケが居間にやって来ました。


「ユースケ、それは嫌味?まぁ…おはよ」




そして2人も腰を下ろしました。



「他の皆は?」

「テルは百合に勉強教えてるよ。あやめはじいちゃんと外に行ったっ」

「なるほど」



しばらくして、ケンのおばあさんが朝食を運んできてくれました。




「…ダイさ、疲れてんの?」

「へ?なんで?」

「珍しいから。俺らより遅く起きるなんて」

「あ、それ分かるー!!ダイ、いつも起きるの一番だもんなっ!!」




そう言われてダイはご飯を食べていた手を止めました。



「…そう?」

「そうそう!!」

「自然に起きるだけなんだけどな」



そう言ってダイは苦笑しました。








朝食後、ダイは1人縁側に座っていました。






「俺、ホントに疲れてんのかなぁ…?」





自分ではよく分かりません。



そんなことを考えながらぼーっとしていると…




バッ





「わっ!!」




突如目の前が何か茶色っぽい何かでいっぱいになりました。



「え…何だ…これ、何?」




思わず下がってその正体を知ろうとします




「あやめ…ちゃん?」




そこにはあやめの姿がありました。





「はいっ!!だいおにぃちゃん」

「…え…」




差し出されたのは大きな向日葵の花。
さっきの正体が判明しました。





「これって…向日葵…だよな?」

「おひさまのはな!!」

「お日様?」

「うんっ」



にこーっと笑ってあやめは言いました。そんなあやめにダイはニコッと笑い返しました。



「ホントだ、お日様みたいに綺麗だね。でも、なんで俺に?」

「だいおにぃちゃんみたいだからっ!!」

「俺?」



よく分からないままダイは自分は指差します。




「だいおにぃちゃんねー、ぽかぽかするーっ!!」

「ぽかぽか…」

「うんっ!!」





あやめは相変わらずにこにこしながらダイに向日葵を差し出します。

ダイはしばらく呆然としていましたがやがて向日葵に手を伸ばします。




「…ありがとう」



それは向日葵のお礼だけじゃなくて。




元気をくれてありがとう。






受け取ったおひさまの花は暖かな光で包まれていました。






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