あの日の夏

□セミを黙らせる方法
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…ミーン…ミーン…
…ジー…ジー…
…ツクツクボーシ…



「だぁああ!!!うるさいうるさいうるさーい!!」



聞こえたのはセミのとケンの大声。



「……正直言ってケンの声が一番うるさいよ」

「!!…ご、ごめんなさい…」



テルの笑顔での発言にケンはビクッとなりながら謝りました。
語尾が段々小さくなっています。


「……まぁ…確かにうるさいよな。ケンが叫びたくなるのも分かるよ」



そんなケンに少しだけ哀れみの目線を向けつつダイがそう言いました。



「だってさだってさ、セミが元気すぎるんだよー。なぁ、ユースケ」

「……別に」

「…えー!?なんでー!!?」

「……気にならないだろ」

「気になるよ!!ユースケは音楽聞いてるからじゃん!!」



ユースケはイヤホンをして音楽を聞いていました。


「はー、なんとかしてセミが静かにならないかなぁ?」

「ならないんじゃない?」


テルが即答で返しました。


「そんなあっさり即答!?俺泣くよ!?泣いていい!?」

「うん、泣けば?」

(鬼ー!!!)


ケンはテルに―だけど言ったらどうなるか流石に分かったので心の中で―そう言いました。


(…容赦ないなぁ、相変わらず)

ダイもまた心の中でそう呟きました。



「セミさん!!静かにしてください!!」



パンパンッと神社でお参りするかのようにケンは両手を叩きました。


「…僕セミにお願いしてる人初めて見たよ」

「…………アハハ…」


ケンの願い虚しく相変わらずセミは鳴き続けてます。


「ケンカ売ってんのか、セミー!!?」

「売ってない売ってない」


どっちかって言うとからかわれてるかもしれません。


すると、今まで音楽を聞いていたユースケはイヤホンを外してダイに聞きました。



「……どうなってるわけ?」

「ケンがセミを静かにさせようと奮闘中」

「………アイツ自身がセミ並にうるせぇじゃん」

「……まぁね」

「……懲りないよな」


誰が、とはユースケは言わなかったがダイは苦笑しました。


「……ケンー」

「ん?わっ、ユースケ!!いつの間に!!」

「……何だよその言い方は……それより、お前もそろそろソレやめろよ?」

「えーなんでー!!うるさいじゃん!!」

「安心しろ。お前よりはよっぽど静かだから…あのな…」


あ、そうかとダイは気づきました。


「セミも必死なんだよな」


ダイはそう呟きました。


「必死?なんでー?」

ダイの言葉の意味にテルも気づいたようで微笑みました。


「そっか、セミの命は短いもんね」

「地上にいるのは1ヶ月ぐらいってとこだよな?」


あっ、とケンは声をあげました。


「そういえば、そうだった…」

「そ。だから…邪魔すんなよ」

「うーん…分かった!!」



相変わらずセミは鳴き続けてます。



「よく鳴くなぁ…」

「でもさ…―」



精一杯生きてるんだと思えばそれさえも心地いいと思えるよ。






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