あの日の夏

□スイカが冷えてるよ
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「やっと着いたなー」

「隣の県でも結構時間がかかるねー」

「行くだけで面倒くさい…」

「そんなこと言うなよー!!じぃちゃんとばぁちゃん元気かなぁ!!」



全ての始まりは一週間前のことでした。


「あのさー、じぃちゃんとばぁちゃんが遊びに来ないかってー」



テルの家に遊びに来ているときに唐突にケンがそう言いました。


「ケンのおじいさんとおばあさん?そういえば数年前に遊びに行ったねー」

「小学6年の時ぐらいだっけ?」

「あー…行ったなぁ…」

「な?だからー、また行かない?じぃちゃんとばぁちゃん家」


笑顔でケンが言いました。


「…うん、久しぶりに会いたいし…いつ?」

「来週ー!!」

「じゃあ、大丈夫」

「俺も行くよ。楽しみだな」

「じゃあ…」


ケン、テル、ダイはユースケを見ました。


「……あっちは涼しい?」

「ここよりはねー」

「……じゃ、行きますか」

「よっしゃ!!けってーい!!」



こうして今に至ります。



「あ、見えたー!!」


ケンが指差した先に南には海、北には山と自然に囲まれた民家がありました。



ピーンポーン



ケンがインターホンを押しました。


「あら〜、よく来たね〜」


出てきたのはケンのおばあさんです。


「久しぶりね〜、ケンちゃん。まぁ、大きくなって」

「うん、久しぶりー、ばぁちゃん!!」

「中学何年生になったの?」


その問いにケンの後ろにいた3人は吹き出しました。


「ばぁちゃん!!俺もう高校2年生だよ!!」

「あら〜、そうなの?ごめんなさいね〜」



そして、ケンのおばあさんは優しい眼差しを後ろの3人に向けました。


「ホントよく来たね〜。えーと、ユーちゃんにテルちゃんにダイちゃんだったかしら」

「はい、お久しぶりです」

「ご無沙汰してます」

「……ども」


3人はそれぞれ挨拶をしました。


「ばぁちゃん、じぃちゃんはー?」

「縁側よ」

「ちょっと挨拶してくるねー」



そして、4人は縁側への廊下を歩いていきました。


「………未だにちゃん付けとは思わなかった」

「アハハ…ケンのおばあさんらしいけど」

「あ、じぃちゃん!!」


視線の先には1人の老人がいました。


「おぅ、健斗。よぅ来たな」


その人は優しく笑いながらそう言いました。


「佑介、輝和、大もな。大きくなったな」

「…久しぶりです」


ユースケが微かに笑ってそう言いました。


「そうじゃ。お前たちのためにスイカを冷やしとるよ。食うか?」



そう言って、その頬にある笑い皺が更に深く刻まれました。




ここはなんだか懐かしくて安心する。


そんな場所でした。




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