あの日の夏
□蝉の声に消えた言葉
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ミーン…ミーン…
蝉が鳴いています。
7月20日のこと。
「あつ…帰るのだりぃ…」
「頑張れよ、ユースケ」
放課後、ケン、ユースケ、テル、ダイといつもの4人で帰っていました。
そんな中ケンは1人浮かれています。
「ケン、なんか嬉しそうだね」
「だってさー、明日から夏休みだぜ!!嬉しいに決まってんだろー!!」
ケンは満面の笑みでそう言いました。
「…………小学生かよ」
ユースケがボソッと呟きました。
「えーと、まず海行くだろ?で、もちろんプールにも行ってー、山でカブトムシも取りたいよなー。夏祭りでたこ焼き食ってー、かき氷食ってー、あ、フランクフルトも食わなきゃ。うわー!!すっげー楽しみー!!」
ケンの夏休みの予定を聞いていて3人は呆れたり、苦笑したり、ある意味感動してました。
「……バカ?」
「夏休み遊びまくる気なんだね」
「いや…夏休みの間でこれをやりきろうと考えてるケンがすごいよ」
「へへー。すごいだろー」
偉そうにケンは言いました。
「いやいや」
「誉めてない誉めてない」
テルとダイが苦笑しました。
「そういえば、ケン、宿題もやらなきゃダメだよ」
「……へ?あぁ、大丈夫、大丈夫。そのうちやるよー」
「…………」
「…………夏休み最後に泣くな、コイツ」
それは毎年恒例のことです。
「それよりさ、夏休み!!楽しもうぜ!!4人で!!」
ケンはそう笑顔で言いました。
ユースケ、テル、ダイは顔を見合わせ…
そして…―
ミーンミーン!!!
蝉の大合唱が聞こえました。
「うるさーい!!」
ケンが大声をあげました。
「ケン、ますますうるさくなるから静かにな」
「はーい…あ、そういえば、さっきなんて言ったの?蝉で聞こえなかったんだー」
ケンの問いに3人はふとケンを見ました。
「………………二度も言うかよ、めんどくせぇ」
ユースケがそう答えました。
分かりきった答えだろ?
文句を言っているケンに対して3人は微かに笑っていました。
蝉が元気に鳴いていた、帰り道のこと。
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