BANDIT
□steal.7
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「…なんであなたもついてくるのよ?ウィア」
リーフェの言葉にウィアは悪びれる様子もなく笑う。
見送る村人達に混ざらず、何故か無関係なはずのウィアも一緒についてきていた。
「だってレンが兄貴のとこ行きたがってそうだったし?」
案内しなきゃだろ、とあっさり続けるウィアにソラは目を丸くする。
「なんでレンが本読みたがってるって分かったんですか?」
レンは一言もそうしたいと言っていないし、表情にも出ていなかったはずだ。
「興味あるものを見つけた時の兄貴と反応が似てたからなー。レンも本の虫だろ?」
「すごい」
素直に称賛するソラの横で当の本人は呆れたような表情で小さくため息を吐いた。
「…荷物置いたらすぐ行く」
「おー」
(レンはウィアさんのお兄さんのとこに行くなら…私はどうしよう…)
やり取りを聞きながらそんなことを考えていると前を歩いていたリーフェが振り返る。
「あの、ソラさんもレンさんと一緒に…?」
「あ、いえ、私は本読むの苦手だから…今どうしようかなと考えてたとこで」
そう返せば、リーフェの表情がぱっと明るくなった気がした。
「なら、お祭りの準備見学しません?今衣装の仕上げの真っ最中なんです。飾りとかも綺麗だから、見るだけでも楽しいと思うんですよね」
「楽しそう!行きた……っと」
とても興味のある誘いにソラは目を輝かせながら間髪入れずに同意しかけて止まる。
ちらりとレンの方を見ると、微かに肩を竦められたが駄目だとも言われず、ソラは今度こそ自信を持って頷いた。
「この部屋でどうですか?」
宿へと到着し、家族に報告したリーフェはそのまま部屋の案内もしてくれた。
日当たりもよく、清潔感のある綺麗で落ち着いた二人部屋だ。
「…充分。案内どうも」
「ありがとうございます」
リーフェに礼を述べると照れたように手を振り、先に下にいますね、とドアを閉めていった。
「レンもウィアさんのお兄さんのところにすぐ行くんだよね。じゃあ、また後でね」
「ソラ」
レンは部屋を出ようとするソラを呼び止めた。
呼び止められたソラは振り返って首を傾げる。
「どうしたの?」
「あー…いや……気をつけてな」
「? うん」
困ったような、戸惑ったような、そんな複雑な表情を微かに浮かべたレンを不思議に思いながらソラは返事をしたのだった。
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