BANDIT

□steal.7
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それからほんの数十分後、穏やかな天気は一転し、辺りは一面真っ白な霧で覆われていた。


周りがほとんど見えない状況にソラはきょろきょろと辺りを見渡す。


「すごい霧…なんにも見えないや」

「…霧が出るような天気だとは思えなかったけど…」


レンは白に覆われた空を見上げながら、怪訝そうに呟く。


(嫌な霧だな…)


不気味なほどに突如発生した霧を睨むようにレンは目を細めた。


「すぐ晴れそうにないけど…どうするの?」

「…とりあえず行く。一本道だから、迷うことはないだろ」


そう言ってレンは歩き出す。
数歩進んだだけでもその姿は見えなくなりそうで、ソラは慌てて追いかけ思わずレンの服の裾を掴んだ。
驚いたような、不思議そうな表情でレンは振り返る。


「…ソラ…?」

「は…はぐれたらやだなって…」


自分でも意識していなかったのだろう、目を泳がせながらソラが答えると、レンは微かに呆れた顔で肩を竦めた。


「…しっかり掴んでたらいーよ」

「う、うん…!」


再び前を向いたレンをソラは後ろから一度見上げて目を伏せた。
片手で自分の胸元を抑える。
心臓の音がうるさいくらいに大きく響いているのを気のせいだと言い聞かせながらレンの服をぎゅっと掴んだ。


そうやって歩いても歩いても霧が晴れることはなく。
時間の感覚さえ分からなくなってきたな、とソラが見上げながら考えていると突如レンの動きが止まる。


「……」

「レン…?」


急に立ち止まったレンにソラは心配そうに見上げその名を呼んだ。


「…家…?」

「…え?」


戸惑ったようなその言葉にソラは目を丸くし、レンの背中からひょこっと顔を覗かせて前を見てみる。

そこには確かに、白の光景のその先にはぼんやりと微かに木以外の影が見える。
目を凝らしてみると、それは家の形のように思えた。
それも一つではなく、複数の。

この森を抜けた先に街などがあるとは聞いていない。


「…見間違い、じゃないよね?」

「否定は出来ないな」


この霧だし、とレンは辺りを見渡す。
相変わらずどんよりと白い。


「…行ってみようよ。もしかしたら昔の建物が残ってるだけかもしれないし。そうしたらそこで休むのもありだよね?」

「…ま、そうだな」


好奇心からだろう、少しだけわくわくしたようなソラの様子にレンは呆れながらそう返事をして歩き出した。


どこまでも続いているように思えた深い森は意外にもそれからあっさりと抜けた。

森の先で待っていたのは、


「…村?」


なんの変哲もないのどかな村がそこにはあった。



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