小説
□喉が潤う
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「どうしたのトリコ。昨日、何があったんだ?」
「い、いや、何でも、ない!」
「嘘。ていうかバレバレ」
トリコは分かりやすくていい。しどろもどろの時は大抵嘘だ。
「教えてよ、何かしてたら謝るから…」
「……(あんなこと言えるか!!)」
トリコの顔は真っ赤だった。本当に気になってきた。
「……ココ、水と間違えて酒飲んだんだよ」
「酒?」
「覚えてねぇのか?なら、思い出さなくていい」
飲んだ覚え……
「ま、まさかあの水…」
気まずそうにトリコはうなずいた。
ボクは、お酒が苦手だ。
飲んだら毒のコントロールがきかなくなるし、飲んだあとはあんまり記憶もないし。
ふと、何かを思い出した。
トリコは思い出さなくていいといったが、そう言われると思い出したくなるのは人間の性(さが)であろう。
「部屋に戻って、また喉が渇いたんだ。そしたら丁度いいところにトリコが水を持ってきてくれた…だっけ?」
「あー、それでいいよ…(ココのヤツ、マジでオレを水だと思ってたのか)」
「ッ…バカトリコ。どうして嘘つくんだよ!」
感情が止まらない。
こんなことに腹を立てても意味が無いのは解っている。
それでも嘘をつかれるのは嫌いだ!
「ココ、悪ぃ…本当の事をちゃんと言う。だから…」
「だから?」
「オレを嫌いになってくれ」
どうして、と聞こうとして口を開いた途端、目の前に蒼色が広がった。