小説
□trick and treat??
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ココの家の近くまで行くと、キッスが迎えに来てくれた。
「さすがココ。オレが来るのもお見通しってか?」
今日はハロウィンだが、ココには特に伝えていなかった。
キッスからはカボチャの甘い匂いがする。
わざわざ作ったのだろうか。
「頼むぜ、キッス」
キッスはオレを背に乗せ、空高く舞い上がった。
ココの家に着くと、まず目を疑った。
「(……ココの家、だよな…?)」
2、3回瞬きをしたあと、もう一度ココの家を見た。
…ココの家だ。
いつものサッパリとした外観と違う。
今は黒い布に家が巻き付かれていて、所々にコウモリの人形が飾られている。
そしてなにより目につくのは玄関にある、大きなカボチャのランタン。
子供一人がくりぬいた穴に入れそうなほど大きい。
なのにキャンドルは普通のサイズで、頼りなさそうな焔を揺らめかせていた。
「かなり気合い入ってんな…」
ココはこういった子供遊びがどうのこうの、とか言ってたが…これを見るかぎり、まんざらでもなさそうに思えてきた。
にやけそうなところを我慢し、ドアをノックした。
「trick or treat!」
(お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!)
ドアが開くと、より一層香りがきつくなった。
「時間通りだね、トリコ。……その格好…犬?」
「いや狼。ホンモノみたいだろ?」
ふさふさした蒼い耳とその蒼い色と同じふさふさの尻尾。
それがココには大きな犬にしか見えなかった。
「ココ、trick or treat!というか寧ろtrick and treat!」
「……………」
ココがあきらかに嫌そうな顔をしたのはトリコは見逃さなかった。