小説

□paralyze
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「ココ!」

ココの家に着いた時には、もう夜が明ける頃だった。

づかづかと部屋に入ると、そこには目を疑うような光景があった。

「……トリコ」

嫌な予感が当たった。

「なんだよ、これ…!!!?」

ありえないほど綺麗に片付けられた部屋。
ココが寝ているいつものベットだけがココの毒に埋もれていた。

「見ての通りだよ、トリコ……」

「見たからわかんねェんだよ!!ちゃんと説明しろよココ!」

ココは黙ったまま、ゆっくりと体を起こした。

「!?」

思わず目を見開いた。
ココから、毒液が溢れだしていた。
その量が異常すぎる。
このままでは…

「何で…」

「トリコ、すまない。…ボクは、もうすぐ死ぬ」

「ふざけるな!何でいきなりお前が死なないといけないんだ?」

ココはうつむいて首を横に振った。

「毒人間のボクでも、毒を入れすぎた。いつかはこうなるとは思っていたよ。制御が、できなくなったんだ」

「そん、な…嘘だろ…」

何故。

ココは抗体を持っていない毒でもその場で精製出来てたではないか。


ああダメだ。

それ以上毒が出ていけばココが死んでしまう。
誰か、お願いだから止めてくれ。



「だから、最後にトリコに会いたかった」

「最後なんて、言うんじゃねぇ…」

「なぁトリコ。ボクが死んだらキッスを頼むよ」

「…知らん。自分の家族なんだろ。自分でやれ」

「ワガママだな、トリコは…」

「………………」

だんだんと小さくなるココの声なんて、聞きたくないのに。


「あぁ、あとこの毒は致死性の毒みたいだから気を付けろよ」

なんで、そんなに余裕なんだよ。
こっちは何を言っていいのか分からないのに。

いや、ありすぎて、混乱しているのかもしれない。


またウマイ飯を作ってほしい。
もう一度ココと美食屋をしたい。

一緒にいてほしい。



死んでほしくない。

「トリコ」

少し大きめの声だった。

「ありがとう。…トリコの…そーゆートコ、大好き」
「………オレも大好きだから…ッ!」

一番伝えたいことば。
ちゃんと言えたかわからない。

フグ鯨を獲りに行ったとき、あんなことを言った覚えがある。
そっくりそのまま返された。

また獲りに行きたいのに。










あれからココは何も言わなかった。
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