小説
□猛毒アルカロイド
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なにやらココが赤い花を摘んできたようだ。
「何だそれ、食えんのか?」
「食べたい?」
とか言うもんだから食えるのかと思い、その赤い花に手を伸ばした。
「猛毒だけど」
「…それを先に言えって」
危うく手にするところだった。その赤い花は桃の花に似ていて、葉は竹の葉に似ていた。
相変わらずこーゆーの好きだよな、ココ。
「花、葉、枝、根、果実も、全部毒があるよ」
「ふぅん…なんて言う名前?」
ココはくすくす笑っていた。
何が可笑しいのだろうか。
「珍しいね、食べ物以外に興味を持つなんて…」
「別にいいじゃねーか。ココが摘んでくるヤツだから珍しいのかと思ってな」
花なんて食えるもの以外興味ない。嫌いではないが、好きでもない。
「珍しくはないけど、夾竹桃(キョウチクトウ)と言ってね、経口で致死量0,3rのオレアンドリンとかの猛毒を持ってる…」
ココは夾竹桃の花を口に含んだ。
きっと美味しくはないだろうに。それでもココは嬉しそうに笑う。
「…ボクと同じだ」
…同じ?
常人では死んでしまうだろうその夾竹桃の毒すらココには美味だというのだろうか。
同じ。
…あぁ、ココも全身毒男だったか。普段気にしないからよく分からなかった。
ココは夾竹桃の葉をちぎり、右手で摘んでオレに見せ付けるようにくるくると回して見せた。
「この毒ならトリコも死んじゃうかな?」
「…………」
なんて嬉しそうなんだろうか。
オレは嫌なことを言われたというのに、不思議と何も感じなかった。