小説

□星に願いを
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10年前―

トリコと野宿の準備をしていた。
ボクはテントを見張っていて、トリコは水を汲みに行っているところだ。

後はもう食事と寝るくらいしか残っていない。
そんな最中、ココは自分の胸に手をあてた。


「何で……」

さっきから鼓動がうるさいくらいに早い。
トリコと離れてから、だ。
頭をフル回転させた。
あれこれいらないことまで全てを考える。





ふと、ある事に感づいた。

「(やばい…)」


気付いてしまった。
何に?って……この変な感情にだよ!


自問自答を頭の中で何度も繰り返し、なんとか落ち着こうとしたが…
それがかえってボクの平常心を煽りたてた。


でも、まさか。
否定したいけど、したくないと頭の奥で何かにささやかれる。
その何かはきっとボクだ。
ボクしかいない。




「はぁ………」

長い間息を止めていたようで、大きなため息をついた。
もう一度息を吸っておく。
そしてよく考える。



ボクは、トリコが好き…なんだろう。
いや、ずっと前から好きだったけど、それは友達…友情の意味の好きだ。

今はそうじゃない。
ボクだってそれなりの年だし、そういった感情が生まれることになんの違和感もない。けれど。

(トリコは男だ)

ボクが女なら問題ないだろうけど、生憎ボクもトリコと同じ男。


同性に恋を抱いてしまうなんて。


ああ、どうしよう。



どうしよう!
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