小説

□毒々しく
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苦しい。

一言で言うとそうなる。

だが、なぜ苦しいのかがわからない。

「トリコ?」

ココが心配そうに聞いてくる。

「もう食べないのか?」

「………食欲がねえ」

ココの表情が強ばる。
ココらしくもなく持っていたフォークも手から滑り落とした。

「な…どうしたんだ?」

「別に食欲がねえくらい何ともないだろ」

「ありまくるだろ」

たしかにそうだ。トリコはココの家の食料すべてを食べつくしてもたりないと言うはず。なのに。

小さくトリコは呟く。

「………んだよ…」

「え?」

ココが聞き返す。

「苦しいんだよ…毒でも盛ったか?ココ」

「そんな事するわけないだろ」

知っている。
ココはテーブルでへたっているトリコの背中を擦る。
「…………………」

時間が経つにつれ、苦しさが和らいでいくのを感じた。

「夏バテでもしたかい?」

落ち着いたトリコの様子を見て、ココは手を離した。
「…………………?」

おかしい。また苦しくなってきた。
なんだ?これは…

「ココ」

まさかとは思うが、もう一度頼んでみる。

「もっかい」

「ん?まだ良くならないのか?」

………ココだ。
原因はココだ。そうに違いない。


あぁ、やっとわかった。
ココの毒だ。毒と言っても悪い毒じゃない。

「何笑ってるんだよトリコ…」

「ココは俺の毒だ」

「はぁ?」

「恐ろしいな、ココは」

「ボクはそんな毒を盛った覚えはないけど…本当に大丈夫かい?」

「ココがいてくれるなら大丈夫だ」

「余計にわからない」

ココは呆れていた。


全く…ココは毒々しい。
トリコにとっては毒であろう。



…言い換えるなら、恋と呼ぶべきか。


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