企画

□千打御礼文

『照れた仕草も愛おしい』


サイジェントの街の商店街。
以前は武器や防具の新調が目的で通っていたが、今日は違った。
そして、今日は二人だけで歩いているのも、以前とは違う点の一つ。

視線だけを横に向ければ、防具ではなく、私服姿の彼女。
少しだけ頬を染めているのは、先ほど私が手を繋いだ所為だろう。

可愛い。
思うと同時に色々としたくなる。

だが、すぐに視線を引き剥がし、進行方向に戻すと同時に、頭の中で必死に誰ともなくいい訳を始めてしまう。

彼女とは7歳も差があるから余計に可愛く見えるのであって。
いや、それを理由にするのは、少々危ない。
いやいや、そもそも危ないのは私自身の理性なのだが。

「レイドさん?」
「え…、あ、何だい?」

今度は、顔ごと彼女へと向ける。

「今日はどこに行きますか?」
「…すまない、決めてなかった」

そうなんですか?とアヤがおかしそうに笑う。
彼女と二人だけで出かけることに満足していたのだから、大人げない。

「アヤはどこか行きたいところは?」
「私は…、レイドさんと出かけられるだけで十分です」

先ほどより朱の差した顔に笑みを乗せて彼女は言う。
(……っ!!)

同じような事を考えていた、だとか。
私とでかける事が、彼女にとって意味があると明言されたこと、だとか。
こんな表情を見る事ができるのが嬉しい、だとか。
ただ、可愛い、だとか。

色々な想いがめぐり、めぐり過ぎてどうしようもない。

「レ、レイドさん!?」

腕の中の彼女の抗議と、周りの人々の視線は、しばらく無視することにする。


END.
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