捧げもの

□隣にある、その温もり
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ずっと、願っていた。


できる事ならば、俺は―……



†††





ある晴れた日の聖王国ゼラム。

その高級住宅街にある、ギブソン・ミモザ邸。



「………………」


赤い髪の少年が、彼にしては珍しい困惑顔をして、ソファーの前で立ち尽くしていた。


…柔らかな日の当たるふかふかのソファーで、栗色の髪をもつ少女が穏やかな顔で眠っていたからだ。


「………」



起こすか、起こさないか。

先程から、ずっと少年は悩んでいた。



本来なら起こしている。



けれど……



(お前は、人の為に力を使い過ぎなんだよ……)



解っている。


彼女が珍しくこんな所で眠ってしまう程に負担をかけているのは、自分達なのだ、と。


だから、少しでも休んで欲しいと思ってしまう。





静かに彼女の隣に座った。



「アメル………」



小さく呟いて、そっと、彼女の髪に触れる。




「ごめん、な……」




守ってやれなくて。


無理をさせて。






…――昔は彼女を守るのは自分だけでありたいと思っていた。

身の安全は元より、この優しい少女の心までも。


けれど、結局は他の人間の手を借りなくては、そのどちらも守ることはできなくて。


そして、それでもなお、彼女には負担をかけている。



…――本当に自分は至らない。

解っているけれど。



「………アメル」




傍に居たい。



そして、できる事ならば――…
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