捧げもの

□希望という名の冠を
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……そうだな。

お前は、いつだってそうだ。


出会った頃から変わらず、

今も、ずっと…――




†††





「おかえりなさいませ、レムオン様、イルティ様」
「ただいま、セバスチャン。久しぶりね」
「近くまで来たのでな、様子を見に来た」


ロストール、リューガ邸。


ここに帰って来たのは半年ぶりだった。


竜王を倒し、闇を祓ってから約一年が経ち、二人は各地を旅して回っていた。





自分達にしかできないことをするために。







「ご安心を。特に変わった事はございません」
「そっか。セバスチャンも元気そうでよかったよ」


ありがとうございます、とセバスチャンは微笑んで…――


何かに気づいたように顔を曇らせた。


「どうした」
「……今月の22日が何の日か、おわかりになりますか?」
「…………あっ!」



突然、大声を上げたイルティに二人の視線が集まる。


「ティアナ様の誕生日!」
「ああ…そういえば」


レムオンが頷くと、セバスチャンは申し訳なさそうに言った。



「レムオン様、毎年行われているパーティーの招待状が届いているのですが……」
「だが、俺は……」
「解っています。レムオン様の分はお断りするつもりだったのですが…」



セバスチャンとレムオンがイルティの方を見る。


「な、何?」
「イルティ様がここにいらっしゃる事は、明日には広まってしまうでしょうね…」
「そうだな。こいつはギルドや道具屋、鍛冶屋にまで顔を出したからな」



まだよく解っていないイルティは首を傾げるばかりだ。



「ええと……?つまり?」
「…お前も一応ノーブル伯だからな」
「……………エストは?」
「エスト様は今日も遺跡です………」



セバスチャンの疲れの滲む声に、イルティは二の句が継げない。


「…どうしても?」
「………行ってこい。リューガ家の為だ」
「申し訳ありません。イルティ様がそういった場をお嫌いなのは解っています。けれど、リューガ家から誰も出ないのは……」



エストの捕獲に失敗したセバスチャンが深々と頭を下げた為、イルティは遂に折れるしかなかったのだった。
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