Summon Night

□私達の日常
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朝、部屋から出て、皆に挨拶をして、洗面所へ。
顔を洗ってから、アヤは髪を梳かす。いつもの習慣ではあるが、今日は少しだけ念入りにする。

今日は休日だから、先ほどの居間には普段仕事に就いているエドスと、自分にとって特別な人であるレイドもいた。
平日は騎士団での勤務開始が早いために、あまり顔を見られない。
だから、休日は嬉しい。
自然と緩んだ口元を鏡に見つけて、アヤは苦笑した。


昼食の少し後。
「たまには昼間に屋根へ出て見ないかい?」
「っはい」
その時私がどんな顔をしていたかわからないけれど、何故か彼に笑って頭を撫でられた。
疑問の言葉を紡ぐ暇もなく、彼に着いて屋根へ上がった。

少しだけ涼しい風と、暖かさをもたらす陽光と、活気を感じるサイジェントの街並み。
「気持ち良い天気だな」
「ええ…」
そして、隣に座る彼が手を伸ばせば届く位置に居るものだから、胸の奥がほわと温かい。
彼が嬉しそうに緩んだ表情をしている気がして、既に自分にも浮かんでいた笑みが深くなる。

少し前まではこんなゆっくりとした時間はとれなかったから。
「無色の派閥の乱」と一部に呼ばれているそれが治まったのはまだ最近。
レイドもそれを期に騎士団へと復帰した。かれが背負っていた罪という蟠りが少しでも溶けたからだろうと思う。
だから、
「幸せ、ですね」
「そうだな。…君が笑ってくれて、君も幸せと思ってくれるなら、余計に」
気恥ずかしそうに、けれど真剣に言ってくれる。
私も同じ。同じ気持ち。
「うん…っ。欲張りかもしれないけど、これがずっと続いて欲しいですね」
返事の代わりに彼が私の手に彼のそれを重ねる。

異世界への召喚という非日常から生まれた日常に、たまに生まれる非日常。
それさえ全てを日常として、彼と一緒に生きていくことができたなら、それが幸福なのだと私は胸を張って言えるから。

そっと彼へと寄りかかって。私は笑った。

end.

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