Summon Night

□手を伸ばしたその先に
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第一章


「おはようございます」
「おはよ、アヤ」


居間へ入ってきたアヤの挨拶に、テーブルへ朝食を配膳していたリプレが最初に答え、他のフラットメンバーも声を上げた。
もう一度お早うと返しながら皆の顔を見渡し、自分が一番最後だったらしいと思ったのだが。

(……あ)

一人だけ見つけられない顔が誰なのかと、一つだけ不在の椅子に気付くのは同時だった。


「…レイドさんは、もうお仕事ですか?」
「ああ。騎士団に戻ってからはしょっちゅうだよな」


自らの椅子につくアヤにエドスが答えてくれた。
その言葉にガゼルと子供達が頷いてみせる。


「ま、副団長様だしよ」
「いいよなーレイド!オイラもなりたい!」
「えー、みんなでご飯食べられないじゃん」
「…きっと、忙しいんだよ」


しょうがないと言いながら、皆は複雑そうだった。
彼が自らの意志を叶えられる場所にいることは喜ばしいのだが、つい先日まではほとんど一緒だった仲間が、食事さえ共にできないという寂しさが同居しているのだ。

自分も寂しい。彼に会えなかった事が寂しい。
何故?仲間だから?本当に…それだけ?
それは、

(駄目)

考えては、いけない。理由を見つけてはいけない。
きっと、自覚してしまえば、”それ”は止まらなくなってしまうから。


「いただきます」


澱のように沈む感情を吐き出すように声を出して、アヤは食卓のパンへ手を伸ばした。
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