Summon Night

□しあわせなこと
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『誰かの為に 大泣き出来る』



知らなかったんだ。


こんなにも、貴方が――…



†††




「ただいま」



いつものように、ミントの家で野菜を貰ってきたフェアは同居人に声を掛けた。


いつもなら、「お早うございます、ご主人。お帰りなさい」

そう、返ってくるはずなのに……。



「………シンゲン?」



けれど、食堂には姿が無い。


まだ、寝ているのだろうか?


そう思い、彼の部屋へ向かう。





―――トントン



「シンゲン?」



返事がない。



「……入るわよ?」



とりあえず、断ってからドアを開けた。



「……………」



居ない。
彼の手荷物も無い。


こんな朝早くに外へ?



今まで、こんな事は無かった。

「何処、に………」



胸の中に、冷水が広がるような感覚。



心臓の音が、うるさくなる。



――旅に……?


――私が、ずっと何も応えなかったから………?




「い、や……」



――置いて、いかれた?




…――また。





「―――っ!」




きびすを返して、出入り口へと走った。



(まだ、間に合う)



―――行かないで。


胸が苦しい。


何故なのか解らないけれど、追いかけなくては、そう思った。。



(行かないで)
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