Summon Night
□しあわせなこと
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『小さなことにも 共感してくれる人がいる』
†††
――トントン
「レイドさん、居ますか?」
「ああ、どうぞ」
失礼します、とアヤがレイドの部屋に入って来た。
その手には一冊の本を持っている。
剣の手入れの途中だったが、中断して彼女に笑みを向けた。
「この前借りた本を返しに来たんです」
「もう、読み終わったのか。……難しくはなかったかい?」
「ええ、とても面白かったです」
アヤは先月から自主的に文字の勉強を始め、どんどん上達していった。
今では、一週間に一冊のペースで本を読んでいる。
元々、孤児院にあった本に留まらず、最近はレイドが持っている本を借りに来ていたのだ。
「この本は私が君と同じ位の年齢の時に買ったものでね」
懐かしそうに目を細めながら、レイドはパラパラと受け取った本のページを捲った。
「今もとても気に入っているんだ」
そう言うと、アヤの嬉しそうな声が返ってきた。
「レイドさんはこのお話が好きなんですか」
顔を見ると、嬉しそうな笑顔。
「私もこのお話、好きなんです」
「そうか」
自然と、顔に笑みが浮かんでしまう。
(何故、こんなにも嬉しいんだろう……?)
(何で、こんなに嬉しいんでしょう……?)
2人がそれに気付くのは、まだ、先の話。
END.