Summon Night

□しあわせなこと
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『電話をかけられる相手がいる』




ありがとう……。

私は、幸せなんですね。



†††




「ふぅ……」


アティは浮かない顔で、風雷の郷へ歩いていた。


(私には何にもできないんでしょうか……)


今日の学校が終わった後、風雷の郷の少女から相談を受けたのだ。


けれど、その内容というのが……






(まさか、恋愛相談されるなんて……)



彼女は郷にいる鬼忍の若者が好きらしいのだが、なかなか思いを伝えられずにいるらしい。




彼女は不安なのだという。


今の関係を壊すのが怖いのだと。


(私は、どうだっただろう……)



私は……逆だった。



関係を壊したかった。



彼の望む関係が嫌だったから。



私は彼と平等でいたかったから。




だから、彼女に何て言えば良いのか判らなかった。



とりあえず、明日しっかりした考えを話すから、と言って今日は別れたのだが。




「はぁ………」



判らなくて、また、ため息をつく。



「アティ殿……?」
「…………」
「…アティ?」
「……え、あ、キュウマ!?」



いつの間にか鎮守の社の階段下に着いていて、彼が私の顔を心配気に見つめていた。



「ご、ごめんなさい。少し、その……」
「いいんです。……悩み事をしていたんでしょう?」




それは問う響きではなかったから、アティも素直に首を縦に振る。



「でも、いいんです。私が相談を受けて、その答え方が解らないっていうだけなんです」
「アティ……」



彼は少し悲しそうな顔をした。

けれど、これしきの事、彼には心配をさせたくなかった。



「本当に大丈夫なんですよ?」
「……解りました。けれど、」



彼はゆっくりと言い聞かせるように言う。


「お願いですから、心配だけはさせて下さい。………少なくとも、自分には」
「キュウマ……」



彼の顔が赤い。

そして、多分自分も。




けれど、



「………本当に嬉しいんですが、キュウマさんも答えられないかと………」
「はい?」




その後、アティの悩みを聞いたキュウマは案の定答えられず、2人仲良くミスミの元へ向かったとか。



END.


あとがき


私は"電話をかけられる相手"="何でも相談できる相手"なのです。


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