頂きもの

□陽だまりの中、ずっと
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「ミスミ様」


縁側へ続く障子が開きっぱなしだったので、ミスミがいるのを確信して、キュウマは床に膝をつき、声をかけた




「しー!静かにせい」


返ってきたのは返事ではなく、怒気を含んだ声

そんなに大きな声を出したつもりはないのだが、ミスミが唇に人差し指を立てて、眉間に皺を寄せた


「は?」

どうしたのだろうと、キュウマは下げていた頭を上げた
そして、ミスミが静かにするよう命令した意味を理解した



「アティ…」







陽だまりの中、ずっと










「縁側で日向ぼっこをしておったらの、眠そうにうとうとし始めたので座布団を渡したのじゃ」
「少し離れた間にこうなっておった」



そこには、座布団を枕代わりにして眠っているアティがいた

とても気持ちよさそうな、幸せそうな寝顔にキュウマは自然と顔が緩んだ





「いい顔で寝ておるであろう?」

「そうですね」


「平和な証拠じゃ。この娘が何も心配せずとも眠れる日々があることがな」


キュウマはミスミの言葉に頷いた


本当に平和な日々だ
自分の心もとても平静で凪いでいる


彼女が自分を変えてくれたのだ

まだまだ自分に自信なんてなくて、
なぜアティが自分を選んだのかが不思議でならないのだけれど




キュウマは、歩を進めてアティの横に腰掛けた


「さてと、邪魔者は消えるとしよう。わらわも甘えに行こうかの」

「え?」

キュウマは理解ができず聞き返した



「墓参りじゃ」

悲しい顔ではない、いつもと同じ笑い方で、ミスミが言う


以前はリクトの眠るあの場所へ行くと、つらくてたまらなかった
でも今は、共に過ごした日々を思い出して幸せに思える
だから、言の葉に返事が返ってこなくても、ちゃんと見守ってくれていると感じることができる

そう、ミスミが自分に向かって口にしたのが、最期の戦いが終わって少しした時



自分も、ミスミ様も前に進んでいるのだ





ミスミが立ち上がり、部屋の外へと向かう




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