頂きもの

□からまった糸はそのままで
1ページ/5ページ




ただ、同じことをして同じ時を過ごしているだけ。


他意はない。




今までだったら…








からまった糸はそのままで








「あれ?」



自分の向かいに座っている綺麗な赤髪の少女が、首を傾げて声を上げた。

それまで静かだった空間に響いた、さほど大きくもなかったその声は
沈黙を破るのには充分な効果を持っていた。



アタシは、自分の手を止めて彼女に微笑んだ。

「どこ?」


「それが分かったら苦労しません!」


一見淡泊な質問だが、彼女に通じたのは、さっきから時たま同じ失敗をしているから。


しかし彼女は失敗したというのに、なぜか笑顔で強気。


まぁその潔さが彼女らしいんだけど。

じーっと少し体を強ばらせて、自分の手元を見つめる彼女の視線を感じながら、アタシは手を動かした。



「あっここが抜けてるわ。はぁいこっからやり直し〜」


「うぅ…」


しゅん、と小さくなった彼女は不謹慎だがかわいいと思う。




アタシは彼女が安心する優しい笑顔で言う。


「アティ、休憩にしましょうか」




そう言うと、アティは目を輝かせて頷いた。



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ