拍手御礼文
□第2期
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夢を、見ていた。
暗闇、そして、呻くような、声。
『帰りたい』
『帰りたかった』
『なぜ……なぜ…!』
『『何故……っ!帰してくれなかった!!!』』
私は、唇を噛み締めて、俯くしかなかった。
"ごめんなさい"なんて、言えない。
この選択をしたのは、私。
全て、私が背負う。
もう、迷わないと決めたから――
†††
「アヤ、何かあったかい?」
「え?」
いつものように屋根の上にレイドに呼び出されると、いきなりそんな事を言われた。
私は軽く苦笑した。
「レイドさんは鋭いですねぇ…」
「君の事だからな」
「……もう……」
からかうように言って、彼は笑う。
心持ち赤くなった顔に苦笑を深くして、私は夢の内容を話した。
「でも、私は後悔なんてしたくないし、今、こうして貴方の傍にいられるのが幸せです。だから、もし私がいつもと違うように見えたなら……」
「なんだい?」
「あんな夢を見た自分がいやだったからです」
自分の中にあんな夢をみさせた原因があると思うと、堪らなく自分が嫌になった。
迷いたくないのに。
彼の傍に居られる今を後悔したくないのに。
「アヤ……」
優しく名を呼ばれ、そっと抱き締められた。
「君は何もかも背負い込みすぎる。もっと、私達に吐き出してくれ。……でないと、私が、辛い」
「レイドさん…」
いつだって、彼は私の心を支えてくれる。
どれだけ、辛さや、悲しみを隠しても、すぐに気付かれてしまうから。
「君は沢山のものを背負わされているのに、それを受け入れてしまえる。それほどに、強い。けれど、君は誓約者である前に、ひとりの女の子なんだ。だから――…」
迷ってもいい、間違ってもいい。
「私が、一緒に背負うから」
暖かで、優しい言葉。
「――やっぱり、レイドさんは鋭いですね……」
一番欲しい言葉を、欲しい時にくれる。
弱さを許してくれる。
「レイドさん、私、ずっと、此処に居てもいいですか――…?」
ずるい言葉。
私は本当に弱い。
それでも、貴方は私を許してくれるだろうか――?
「前にも言ったじゃないか……。何処にも、いかないて欲しいと…」
「……ありがとう…ございます」
ずっと、此処に居たい。
貴方の傍に、ずっと、ずっと。
それだけは、迷わない自分でありたい。
この願いだけは絶対に――
END.