企画
□千打御礼文
夕食の時も、その後の談話の時も。
彼女はいつもどおりに笑っているように見えた。
…――けれど、気のせいだろうか?
無理をしているように見えるのは。
先入観から来るのかも知れないけれど、そんな気がして仕方がなかった。
私が知る彼女の笑顔はこんな風だっただろうか?
――そんな考えに没頭して、少しぼうっとしていたらしい。
「レイドさん、どうかしましたか?」
アヤがは不思議そうに首を傾げながら、顔を覗き込んできた。
「いや…、何でもないよ」
「そうですか?」
笑顔を浮かべて頷くと、彼女もそれ以上は追求してこなかった。
(君は、大丈夫なのかい?)
そう問えたらよかったのだけど。
彼女のその笑顔に何も言えなかった。
もし、無理をしているのなら、その無理を崩していいのかと。
必死に支えているかもしれないその笑顔を、歪ませてもいいのかと。
「…………」
結局、答えが出ない内に、アヤは自らの部屋へ引き上げてしまったのだった。
→次へ
[表紙へ戻る]
ゲームブックを検索