捧げもの

□隣にある、その温もり
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「………ん…」


アメルはまだ重い目蓋をゆっくりと開いた。


目に入った部屋は茜色に染まっていて、寝過ごしたらしい事がわかった。

慌てて、体を起こす。



「いけない……っ、…え?」



視線の端に、夕焼けの茜色よりさらに鮮やかな赤が掠めた。


よく知っている色。


ゆっくりとそちらに視線を向けて、少女は大きく目を見開いた。


何故なら…――



「リューグ……?寝てる、の……?」



何故か自分の隣に座って、少年は眠っていた。



彼は普通、こんな所で眠る事はしない。


いつだって、気を抜かずにいる人だから。



「……………」


少女の顔が陰る。



(ごめんなさい…)



沢山の無理をさせて。


貴方は昔も今も私の傍に居て、私を守ってくれている。


けれど、貴方は何も言わないから、とても心配だったんだ。


貴方がいつか潰れてしまうんじゃないか、って……



(でも……)



こうして、自分が身じろぎしても目を覚まさない程に熟睡している彼は、とても穏やかな顔をしていた。


小さな声で呟く。



「ねぇ……リューグ?」



私は、ずっと願っていたんだ………




…――できる事ならば、貴方が誰よりも安心できる場所が、私の隣にありますように……



少しは、叶ったのだろうか?




少女は少しだけ微笑みを浮かべてから、




目を覚ました彼に美味しい夕食を出す為に、軽い足取りでキッチンへと向かったのだった。





END.
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