MUSOU

□氷の唇
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「待たぬか、兼続!!」


政宗は汗血馬を走らせ、長谷堂をひた走る
追うは、上杉家臣と軍師でもある直江兼続
巧妙に逃げ回り、小雨の降る長谷堂は
見通しが悪い
更に雨と汗が左目に入り、瞬きを繰り返す


「くそっ…見失ったと言うのか!」


政宗は手綱を引き、馬を止める
辺りを見渡すと配下はおろか、兼続の姿も見えない。


「このあたりから逃げるはずだ…見逃す筈はない…」


政宗は馬から降りると、この長谷堂から逃れるであろう砦に回り込む

目を凝らし、気配を伺うが何も感じられない。
政宗は溜め息をついて顔を上げる


「仕方ない…慶次に足止め食らってる奴等も心配じゃ…悔しいが今は退くしかあるまい」


政宗が愛馬に向かって足を進めた瞬間
体が宙に浮き、動きが取れなくなる


「なっ!? グゥッ!!」


振り向こうと首を巡らせた瞬間
後頭部に鈍い痛みが走ると供に目の前が暗くなる

遠くなる意識に僅かに見えた白い鎧


「政宗…」


……兼……続……!


兼続は、意識を失った政宗を抱き起こし
政宗の馬に跨がると、少し離れた庵に止まる

兼続は庵の中に入ると、畳まれた布団の上に政宗を下ろす
両手首と、両足首に、印を書いた符を貼り付け、兜を外す。
1刻程動けない呪符を貼り、庵を出ようとして、ふと政宗を見る


薄く開いた唇
滲んだ涙が一筋流れた頬
額に張り付いた茶色の髪

触れようと指を伸ばすと、政宗は
譫言の様に声を出す


「…… か ねつぐ…」

「?…政宗?」

「くっ う 兼 続」


兼続は、忌々しい人物の名を呼ぶような響きではない政宗の声に、口角を上げる


「どうした政宗、何故そんなに私を呼ぶ?」


意識が朦朧としているのか、政宗の頬に手を添え、額に唇をあてると政宗の顔が歪む


「兼 続… 行く なっ 」


新たに流れる涙を舌先で拭うと、小さく身動ぎ、瞳を瞬かせる
長い睫毛に小さい雫が鈍く光る

政宗の瞳が数回瞬くと、急激に瞳にキツい光が戻る。
至近距離の兼続に体を強ばらせ、ギリッと
歯を噛み締める。


「どうした政宗…私が愛しいか?」

「はっ! 何を!」


政宗は、絞り出す様に声を発するが
兼続の手か酷く冷たく感じる

冷たい…と言うより自分の頬が
熱いのだ

政宗は兼続から目を反らし、唇を噛み締める。兼続は、自分の兜を外すと政宗に顔を寄せる


「政宗…」


兼続が耳に息を吹き込むように名前を呼ぶと、伝わってくる震え
兼続は耳元に唇を押しあて、舌先で
耳の内部を舐める
くちゅっと立てる水音に、政宗はぎゅっと
目を閉じる


「くっ そぉっ 止めっ 」

「傍に居て欲しいんだろ?…お前は、
そう言ったぞ」

「言ってない っあ」


細く冷たい兼続の指先が、肌けた鎧の隙間を触れる度に、意思に反して体が跳ねる
動かない手足に力を入れるが、
僅かに動くばかりで意味は為さない

兼続の指が政宗の腹部を伝い、唇が耳から
首筋、鎖骨、胸の突起に触れると
食い縛った口から息が漏れる


「くっ ふぅ ん ッ」


胸の突起を舌先で形をなぞるように舐め
回りをなぞり、歯で軽く噛む


「ひっ あっ やぁ んっ」


ジワリと腰に熱が集まり、下帯を押し上げる感触に唇を噛み締めるが、鼻に掛かった
喘ぎが止まらない

兼続は執拗に胸の突起を吸い上げ、
政宗の鎧を次々と解き、肌を曝していく


「政宗…」

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