MUSOU
□輪廻
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数発の銃弾の音と供に男の躰が宙を舞う。
馬上から弧を描いて。
手を伸ばしたのに。
目の前に崩れ落ちてくる体
俺は駆け寄りその躰を抱き起こす。額から唇から流れる夥しい赤。顔色は蒼白になり、唇は紫。その唇を赤く染める。
「… !ッッ !目ぇ開けてくれッッ」
「… … さまって言わぬか。相変わらずじゃな…成実」
「イヤだッッ!逝かないでくれ!ッッ! 」
守れなかった。
命を賭して守るべき命を
守れなかった
†輪廻†
「クッ…!はぁ…また同じ夢だ……名前…がわっかんねぇ」
汗だくで目が覚め、成実は着ていた服やシーツを洗濯機に突っ込み、スイッチを入れてシャワーを浴びる。
成実は濡れた鏡越しに歪んでうつる自分を見る。
あの自分の腕の中で冷たくなっていく男の顔を思い出す。
毎日のように同じ男の夢を見る。思うに自分は従者で、つかえていた主君を亡くしたようだ。
ただ、自分はその男を主君としてではなく、どうやら想いがあったようだ。
深い主従関係以上の愛しい気持ちを。
「いやいや…俺ノーマルだし、男に欲情しねぇし。」
成実は、目を閉じる。
鮮やかに蘇る白い肌。発達段階の躰。茶色の髪。
「ヤバイな…」
成実は頭をふり、浴室から出てコーヒーを飲み、タバコに火をつける。
ゆっくりと煙を燻らすと、白昼夢のように煙の向こうで夢の男が微笑んだ気がした。
「はぁ、ホントヤバイ…」
俺、オカシクなっちまう。
あっ洗濯物干して出掛けねぇと…慶次と課題やる約束がある
成実は乾ききっていない髪をそのままに、シャツとジーンズを着ると慌てて洗濯物を干して愛用の単車にまたがり大学に向かう。
待ち合わせていた部屋に行くと、早くも慶次は課題のプリントと格闘していた。
部屋にきた成実に手をふる。