MUSOU

□其の眼に映るものは…
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「隻眼の将よ!この独眼竜が相手する!」



相次ぐ闘い


オロチ側についた伊達の大将

激しい、つばぜり合いの末
伊達の男は地に伏せた



「殺すが良い。もう…何も見えぬのだ。」



彼の独眼竜の喉元に突き立てた劍を反す
喉にあたる冷たく鋭い刃



「地に伏せた龍の首など容易く切れような」



政宗は良く通る心地の良い声に
閉じていた目を開け、刃を突き立てる男を見上げる



「魏の夏候惇…貴様に斬られるは本望よ」

「フン…安い本壊よ」



夏候惇と呼ばれた武将は刀を収める

地に伏したままの政宗の兜をとると
髪を掴み上を向かせる



「貴様も独眼竜と呼ばれ、志あってオロチに
付くのだろう?
ならば足掻き、意地を見せたらどうだ」


「敵の哀れみ等要らぬ。一思いに斬れ」


「貴様のような腰抜けに付き従う将も
憐れな事だな。信念貫かず、
意味なくオロチに従う貴様に。
命を掛けて成す程の愚将揃いと言う訳か」


「何?!」


政宗は夏候惇に掴まれていた腕を振り払う


「儂の部下の悪口は許さぬ!」



声を張り上げる政宗に夏候惇は口端をあげ
ニヤリと笑う



「貴様の眼は何を見ている」



「何だと?」



「片目では大したものは見えぬか」



「きっ貴様も片目だろうが!」



夏候惇は政宗の前髪をかきあげ顔を曝す


「何をすっ!「だから見えない」


夏候惇は政宗の言葉を遮ると
政宗を立たせる



「左目を隠す時点で見えてねえ
貴様は左目でしか見てないからな。
右目には何が見える

俺達はひとつ目
故に見えるもんがあるじゃねえか」


政宗が夏候惇を見ると、つっと顔を背けられる。うっすら赤い顔
政宗は吹き出すのを我慢して、彼の隻眼の男を見上げる


「夏候惇」


「なんだ小僧」


「小僧ではあるが伊達藤次郎政宗じゃ」


「そうか」


「座らぬか。夏候惇」


「呼び捨てか藤次郎」


夏候惇は少し憮然としながらも、政宗と供に地に座る


「なぁ、夏候将軍。ひとつ目よと言われ
辛い日は無かったのか」


夏候惇は政宗の問いかけに片眉を上げ
フンと息を吐く


「さぁな。其処ら中の鏡と言う鏡を割った事はある。」


「気持ちは解る…。醜い我を映す鏡に
罪はないが…」


夏候惇と政宗は同時に盛大にため息をつく


「夏候将軍。儂はな、某方を尊敬しておる
この右目は如何様に無くしたのかと聞かれ
文献で知った某方の言い方を真似たのだ
親近感と尊敬…って笑うな!」


政宗は、声を殺して笑う夏候惇を睨む


「悪い悪い。が、
そうか。 なら解るだろう? 見えぬ目に
見えるものが。」


「あぁ…見えるが…狸が邪魔での…
この世界ならば…オロチが変えてくれると
いや、言うても始まらぬが
あ奴の哀しみ、苦しみに同調した。
忌み嫌われ、存在を消してくれるやもしれん敵を待ち……まぁ良いわ。
して夏候将軍は何が見える?」


「俺には孟徳の覇道のみよ。
政宗。お前はお前の道を行け。それが
お前の覇道だ。人に言われようとも貫け。」

「言われずとも先刻承知よ。」


夏候惇は小さく微笑み、立ち上がり、
政宗に向かい剣を抜く


「次は容赦せぬ。
じゃあな独眼竜」


政宗が夏候惇の剣に自分の剣を併せニヤリと笑う


「あぁ、次こそ、
その首……貰い承ける」


夏候惇はフンっと鼻をならし、馬に跨がり
走り去った。




「政宗。」


「なんじゃ慶次」


政宗は、いつの間にか背後にいた慶次に振り向く


「行くか」


慶次はニヤリと笑い、政宗の肩を叩く

政宗は慶次と供に松風に跨がり、自軍に戻って行った。




end









おまけ


妲己「政宗さん!敵と仲良くしてたんですって?」

政宗「慶次じゃな?」

妲己「慶次さんから聞いたわよ、浮気してたって。」

政宗「誰が誰と浮気か!」

妲己「政宗さんと夏候惇よ!」

政宗「……慶次にはそう見えたのじゃな?」

妲己「もー。駄目よ?浮気は」

政宗「しとらんし、慶次と何があるわけでもないわッッ!」


怒りに慶次を探しに行った政宗を見送る

妲己「なーんてね。慶次さんが告げ口する訳ないじゃない?政宗さんがいる限り。
慶次さんは裏切らないわね」



実は妖鳥を通して見ていた妲己でした。



意味なし!
オロチ再臨で夏候惇対政宗の台詞から
ネタ。どんだけや…

20081001 風近
 

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