MUSOU

□お前なんか
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「だからな、…って聞いておるのか!政宗!!」


はぁ、と政宗はため息をつく。

先ほどからこの直江山城の守兼続は政宗の居城に来て、愛だの義だのと講義三昧なのだ

だいたい山城の守って、城に居たためしがあるのか?

ここの所毎日来てなんだかんだと。


「兼続よ」

「なんだ政宗」

「なんだではないわっ、まず貴様山城に居らんでよいのか?それから何故急に儂を政宗と呼ぶ?あれほど山犬よの蔑んでおったくせに」

「なるほど、解答は2つだな。まず山城だが、常に仕事は済んでいる。優秀さの成せる技とも言えるがな。
それに名前で呼ぶのはいかんのか?政宗を政宗と呼んでどこがおかしい?」

「然り。相分かった。」


政宗は諦めたように頬に手をついて煙管に火を点けようと煙草入れに手を伸ばすと、伸ばした手を握られる


「兼続。この手はなんじゃ?止めたいのか、握りたいのか、どっちなのだ」


目の前に居た兼続は両手で政宗の手を取り、一点の曇りもない澄んだ瞳は、政宗の隻眼を見つめる


「政宗」


余りの真剣な声に手を振り払う事も忘れて見入ってしまう


この兼続と言う七歳年上の男は、綺麗な顔をしている。
白く整った顔立ち、長い睫毛。
薄く血色の良い唇


…しかし、女のように綺麗な顔をしているものよ…




ちゅ




政宗がぼんやりと考えていると、唇に違和感を感じる。


「?!!」

「政宗は私を嫌っておろうか?」

「はぁ?」

「私は政宗を好ましく思う。故に先ほどの口付けは愛の証だ」

「はぁ」

「可愛い顔で呆けているな…そうか!私の愛の証に感動しているのだな。照れるな政宗よ。供に愛を育もうではないか」


絶句中の政宗をヒシッと抱き締める。軟らかい栗毛を撫でながら兼続は政宗の頬に再度口付けると、政宗が漸く暴れだす。


「やっ止めんか馬鹿め!」

「どうした政宗。恥ずかしいのか?」

「貴様の思考が恥ずかしいわ!第1何が愛だ、山犬よと蔑んでいたのは何処のどいつだと言うのだ?それに、貴様は前、嫌いじゃと言っていた。儂を嫌う奴は儂も嫌いじゃ」

「フム。成る程、政宗は理由が欲しいのだな。
未熟者め、よくある話しではないか。好きな相手にはつい言い過ぎてしまうものだ。私は政宗が嫌いとは言っていない。利に走る犬と言ったが。
何事にも、理由はある。悩み考えた末、何故政宗がそこまで気になるか考えた時、気が付いたのだ。これは愛だと。」

「…つい言い過ぎって域を越えておる…何より儂も貴様も同じ男だぞ?それより貴様はそんなに男前なのだから、儂は両目揃わず醜いのだから」


政宗の言葉を、兼続は手で制止する。


「ウム。政宗も私が好きなのだろう?それに政宗はとても美しい。片目?結構じゃないか。私を、この兼続のみを映せばよい。」


政宗は目の前の男を凝視する

今儂は…
こいつに好きだと言ったのか?

遠回しに言ったのか?



断じて好きだとは言っていない!


筈だ…
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