短編

□しりとり。
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『暇ー。』


「そうだね。」


『そうだねって……ちょ、ひどくない?』



せっかく書類整理の手伝いで遅くまで残ってあげた人に言う言葉じゃないよ。もう。でもまぁ、いいけどさ、べつにね。

一つ一つに判子を押しながらなんとも心ここにあらずなカイの返事に少しぷりぷりしながら私も次々積み上がっていく書類の山を種類別に分けていく。この作業をずーっとさっきから続けていてもう飽きてきた。


あ、なんかいいこと思いついた



『しりとりしよう。ん、がつかなかったらなんでもありの。』


「え、なんでしりとり?」


『いいしょ、いいしょ。やろ?』


「うん。そっちからね。」


『うん。しりとりのりから。りんご。』


「うわ、オーソドックス。じゃあゴリラ。」


『ラッキー。』


「い、いす?」


『好き、カイ。』


「はぁ?!」


『ほら、カイだよ。』


「い、いつから?」


『螺旋階段で会ったときからだよ。』


「よ、よく覚えてたね。」


『寝ても覚めても忘れることなんてなかった。』


「だいぶ前のことなのに。」


『二度と会えないかもって思ってたからね。』


「念のため聞くけど、これって告白?」


『苦労すると思ってたけどここまでとは。』


「は、恥ずかしい……。」


『いつもカイだけ見てたんだからね。』


「熱はないよね?」


『熱なんてないんだからさ。』


「さすがにびっくり。」


『リアルに私も。』


「もっとハルみたいな大人の男が好みだと。」


『どうして?』


「寺田さんが行ってた。」


『たくっ……私はずーっとカイだけ。』


「結構奥手なんだけど。」


『どう見てもそうかも。』


「も、もう。」


『うんって取っていい?』


「いくない!」


『いくないの?』


「脳内爆発しそうだよ。」


『ようやく言えたんだ。』


「だ、だから?」


『来年もこの先も一緒にいよう。』


「う、うん。」


『カイの、負け。』


「………オレなんかでいいの?」


『カイがいいんだよ。』


「恥ずかしい。」


『じゃあ、早くこれ終わらせて飲みにでも行こうよ。』


「ちょ、ま、待ってー!」



カイと私の大人のしりとり。やっと伝えられた愛の言葉。










しりとり
―勇気を出して―



(え、あれ?)
(あいつらいつの間に…。)
(まぁ、わかってたけどね。)
(それもそうだよな。)
(まぁね。)


わだかまりが消える












二人とも思い合ってるんだけどきっかけがなくて言いだせなかったお二人さん。もどかしかったろうなーなんて思う。







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