NOVEL
□‡指先‡
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トクトクと注がれた液体が氷を浮かせる。
「ブランデーを加え」
ブランデーのキャップを閉め、耀爾が次に手にしたのは柄が長く、真ん中がネジ状になっているバースプン。
耀爾は螺旋形の上部を右手の親指と人差指の指先で確り持ち、自分の方にスプンの内側を向け先の方の側へ差し込んだ。底部へスプンの先をつけると中指と薬指の間に螺旋形の中央を挟み回転させる。
「軽くステアし…って、本当はマドラーでするんだけど、ちょっと今ないから許して?」
先の方ではスプンを下げ、手前ではスプンを少し上げ気味に軽く混ぜ合わせると、氷がグラス内で回される。
「………ッ」
琥珀色のそれはとても美しく、視ている健の眼を歓ばせた。
数回混ぜた後、耀爾の手が止まり静かにスプンを抜く。
「と、できたのが…」
グラスの底に小指を宛てがい、ワン・クッションし差し出された。
「“BANANA BLISS”」
「………」
健は息を呑んだ。
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