NOVEL

□‡指先‡
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「飲む?」

耀爾は体を傾け部屋に入るように促した。躊躇の色を見せる健に耀爾は苦笑し一言付け加えた。

「一人で呑むのも味気ねぇしよ」

肩を軽く上げる耀爾に健は小さく頷く。

「んじゃ、ちょっとだけ…」

 悪戯っぽく笑う健。

 健が空いた席に腰を下ろすのを確認し、耀爾は新しいグラスを自分の方に引き寄せた。

「俺と一緒のでいい?」

「うん…?」

 不思議そうに見ている健に耀爾は微笑みを返す。
 耀爾の長い指が、アイストングを取り硝子製のアイスペールから氷をグラスに移す姿に目を奪われる。

「何作るの?」

「BANANA BLISSだよ」

「カクテル?」

「そ、“クリーム・ド・バナナ”っていう熟したバナナの芳醇な風味をスピリッツに移しとって、たっぷりと時間をかけ熟成させたバナナ・リキュール…これに」

 2、3個氷を入れたグラスに、説明しながら“クリーム・ド・バナナ”を注ぎ、違う瓶に手を伸ばす。


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