NOVEL
□‡月下のワルツ‡<後編>
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わざわざ思い出させて、苦しめる必要は ないんだ…
自分のエゴで。
愛しい人を。
不幸にしては…
─────イケナイ。
「知らないよ…俺は、何も」
肩の傷が痛むフリをして俺は頭を垂れる。
痛むのは 肩よりも、
胸のほうだ。
馬鹿野郎!!
ケンは自分を罵倒した。
ヨージが記憶喪失になったとき、俺は誓っただろう?
『お前が喪失したものは、』
『俺が背負ってやるよ。』
なのに・・・
《思い出して欲しい》
なんて。
「……ケ…ン…」
呟く。
なんで、この人は
嘘をつくのだろう。
あなたは、俺を知ってるはずでしょう?
あなたが、俺を知らないと云う度、あなたは辛そうな顔をしてるじゃないか。
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