NOVEL
□‡指先‡
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強がりは、
弱さの裏返し。
*指先*
第一印象は『ただのガキ』。
耀爾は吸いかけの煙草を指に挟みバナナ・ブリス-BANANA BLISS-を扇る。
「“最高の喜び”か…」
グラスの中で音を奏でる氷、バナナ・リキュールとブランデーのとてもマッチした香り、ナイトキャップの酒としては持ってこいの甘口。
眠れない夜を慰めるのは、酒か、いつも違う女。
今日のお相手は酒だった。
「ヨージ?」
ドアをノックする音に耀爾は返事をし、席を立った。扉を開けると同居人の一人、健だった。
「どうした?」
「今日 昼に小包来てた。ソレ預かってたから…」
そういう健の腕には小包。
「あー、サンキュ」
耀爾が小包を受取る瞬間、健の黒い瞳が身長差のある彼を見上げた。
「なに?」
それに気付き、耀爾の容の良い口が動く。
「あ、いや…お酒の匂いがしたから」
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